昭和初期、この辺は一宮浅間神社の参道で、映画館や下駄屋さんがあるなど繁華街だった。20年間空き家になっていたこの建物はお饅頭屋さんだったそう。勝沼の朝市にオーナーの井上さんが出店していた時、たまたま建物が気になっていると話した方が、偶然建物の持ち主のご親戚だったことから、借りるまでとんとん拍子に話が進み2009年10月に開店した。気軽にお茶を飲みに来て欲しいと、喫茶という名前にこだわった。店内は、手洗いボウルがご飯を炊くお釜だったり、足踏みミシンの台がテーブル代わりに使われていたりと、古い道具がセンス良く随所に用いられている。店名は、踵（きびす）をつける…という使い方がされる「かかと」の意味。

　トマト煮込みハンバーグには、5～6種類の季節の野菜をそれぞれ調理したものがついていて、ほとんどが自家菜園でオーナーが自ら作ったもの。できるだけ無農薬をと心がけているが、取りあえず今までは使わないで何とかなっているという。季節に自分の畑で採れたものをそのまま料理して提供するということが、とても気に入っている。畑で収穫しながら、調理方法を考えたり、他のお店で食べておもしろいと思った味も取り入れている。なるべく、きちんと作られた調味料を吟味して使用しているが、時には見学にも行ったりするという。ちょっとした前菜が付き、ライスかパンが選べるが、本日はパンを選択し、やってきたのは手作りのローズマリーのフォカッチャ。パンの一つを、最後までとっておくのがおすすめ。ハンバーグを食べ終わった後のワインが入った美味しいソースを、もったりと柔らかいフォカッチャでこそげとって最後まで楽しんで。 

　この店ではコーヒー好きな店主が、バランス、酸味、ビターの3種類をメニューに載せている。その都度、カテゴリーに合う豆を東京の焙煎屋さんが送ってくれる。「おいしい！どんな豆だろう？」と思ったら、オーナーに豆について尋ねてみよう。産地など教えてくれる。ぶらりと立ち寄って、店内の雰囲気を味わいたい店。（取材日2016年3月16日）