2019年2月3日(日)甲府市総合市民会館にて『暴走するゲノム編集~分子生物学者からの警告~』を開催し、90名の方が参加いたしました。
進むゲノム編集
中国でゲノム編集によって双子の赤ちゃんが生まれたことが話題になっていましたが、すでに知らないところで人間・動物・食用作物まで高速で開発がすすんでいるとのこと。
例えば
- 体内時計を壊したクローン猿 5匹 (中国)
- 夢を見ないマウス (理化学研究所)
- 同性婚のマウスによるマウスの出産 (中国)
- 肥大豚 (中国)
- マッスル真鯛(京都大学・近畿大学)
- 受精しなくても実がなるナス (タキイ種苗)
- ソラーニンのないじゃがいも (理研)
- アレルゲンのないダイズ (北海道大学)
- 種無しトマト(筑波大)などなど
ゲノム編集の道具はわかりやすく説明すると、目的に案内するガイドさんが目印をつけるマーカーさんとDNAをカットする分解酵素さんを船に乗せていると考える。その船本体も生物に入りやすいウィルスやプラスミドを使っているが、増殖機能を壊したウィルスとしている。
懸念される危険性は、
- そのガイドさんの役割が間違った目的を認識したらどうなるのか?(オフターゲット)
- マーカーさんは、主に発光クラゲを使ったり、抗生物質耐性遺伝子を使っている。ゲノム編集を識別するには必要だが、それ以外では不要な遺伝子であるという問題。特に抗生物質耐性遺伝子は腸内細菌の遺伝子に取り込まれ、腸内細菌が抗生物質耐性になってしまう恐れがあると指摘。
- 分解酵素に対する免疫反応や発がん抑制遺伝子を妨害することによる発がんの危険性増などの問題もある。
遺伝子組み換えの時から抗生物質耐性遺伝子は使われており、組み換え飼料にも多く含まれていると指摘。そのことにより、今国内にある鶏肉の半分は薬剤耐性菌を持っていると新聞発表もされている。アメリカの食肉は「抗生物質耐性遺伝子が常在している」と言われ、年間5000人が食中毒で死亡、外来患者の25%が耐性菌を保持しているそうである。
生命倫理の観点
種間キメラ動物が既に作成されている。→臓器移植のため。
人の心臓をもった豚→実現されている。
ヒトの脳を持った豚は何を考えるのか?
そういったキメラ動物の存在による生態系に及ぼす影響も大きい。出生前診断とセットでゲノム編集は始まる可能性が十分ある。
ゲノム編集の種類
- 目的の遺伝子を破壊:ノックアウト←表示なしという方向に進んでいる。
- 別の遺伝子を挿入:ノックイン
- 目的遺伝子の塩基配列の改変
- 目的遺伝子のmRNAからタンパク質合成を妨害:RNA干渉
以上の4種類のうち、ノックアウトに関しては、表示は要らないという方向で動いているが、マーカー遺伝子のことは一般には知らされていない。
まとめ
下記の開発科学者の言葉を引用し、一般市民が技術そのものの危険性を知り、せめてどのゲノム編集に対しても表示義務をすすめるよう、パブリックコメなどを発信してほしいと締めくくった。
Cas9酵素を開発したチームの一人、カリフォルニア大学のジェニファー・ダウドナ教授は「原子力とゲノム編集には開発に関わった科学者の、この世界の仕組みを理解したい、という根源的な知識への欲求が共通している。ゲノム編集も生物兵器に使われる可能性があり、原子力と同様、一度この技術を手にした時、恩恵ばかりか危険を伴う事が直ちに分かった。科学者自身がこの危険性にどのように向き合うか、自からに問いかけると同時に科学者だけでなく一般市民との開かれた議論を通じて社会的な倫理と規制につなげるべき」と述べている。 |
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講師:河田昌東(かわた まさはる)氏
プロフィール
現チェルノブイリ救援・中部理事 運営委員。
1940年秋田県能代市生まれ。東京教育大学理学部。名古屋大学理学部大学院理学部分子生物学研究施設大学院卒。その後も同大学にて分子生物学を研究されてきました。2004年退職後も分子生物学の観点から、多方面でご活躍されております。